• 火曜日 , 23 5月 2017

トレーニングマスクと、高地トレーニングは本当に効果があるのか?

 

トレーニングマスク

アイキャッチ画像出典:amazon

こんにちは!フィットネスジャンキーです!

スポーツ観戦が好きな方や、実際にスポーツ競技に取り組んでいる方であれば、トップ画のトレーニングマスクを1度は見掛けたことがあるという方も多いのではないでしょうか??

このトレーニングマスク(レブナマスクとも呼ばれる)は、高地トレーニングを再現して心肺機能を高めるというもので、マスクについているバルブと付属品で強度も段階的に調節ができるというものですが、このようなアイテムを使えば本当に心肺機能、持久力を高められるのでしょうか?そしてそもそも高地トレーニング自体に効果があるものなのか??

米国のサイト、bodybuilding.comではこれらの疑問に応えるべく、オハイオ州立大学で運動生理学の博士課程に在学中で、アメリカスポーツ医学学会認定パーソナルトレーナーである、キーラン・フェアマン氏が興味深い見解を示していました。

少しだけ長いですが、要約した内容を最後にまとめているので、途中で読むのが面倒になってしまった方はそちらをご覧になってみて下さい。

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高地トレーニングと、トレーニングマスクは本当に効果があるのか?

以下は翻訳部分になります。


 

最近はどこのジムでも見かけるようになりました。消防士にでもなるためのトレーニングなのか、スキューバダイバーなのか、バットマンのベイン役でファンフィルムでも作っているのか。目的はなんであれ、Maskmen(マスクマン)達は激しいトレーニングをしています。このトレーニングマスクに100ドル近い金額を払ったのなら、確かにワークアウトは次のレベルに達するはず…なのですが、実際のところ、そうではありません。

私自身、よりよいトレーニングのためなら何でもします。しかし、このトレーニングマスク、高地のような低酸素状況を作り出して心肺機能を強化するという触れ込みですが、このマスクをしてトレーニングを行うことは、実際に何かの役に立つものなのでしょうか。

トレーニングコーチであり、コンプリート・ヒューマンパフォーマンスの設立者でもあるアレックス・ヴィアダは、このような高地トレーニングの道具は「トイレに頭を突っ込んで泳ぐ練習をするようなもの」と言います。

このマスクを使っている人の中には、トレーニング後により呼吸しやすくなるという人もいますが、例えるなら枕を口に突っ込んで1キロ走って、その枕を取り出した後には呼吸しやすくなる、というのと全く同じことではないかと私は思うのです。

冗談はさておき、悲しい事実ですが、トレーニングマスクでは高地トレーニングの条件を再現することはできません。加えて、このマスクをレジスタンストレーニングのような無酸素運動の際につけている人がいますが、無酸素運動ではそもそも酸素を必要とせず、全く異なるエネルギーシステムを使うのです。こういう使い方をすると、マスクの価値はさらに疑わしいものとなります。

 

高地トレーニングとマスクの根本的な違い

ではどうしてトレーニングマスクで、高地トレーニングの条件を再現できないのでしょうか?

高地では気圧が下がります。酸素の圧力も一部、または場合によっては酸素すべてが減少します。空気は薄くなり、呼吸が困難になります。結果として、血中への酸素供給も下がり、筋肉に運ばれ利用される酸素も減ることとなります。

身体が高地で酸素分圧の低い状態にさらされると、体はミオグロビンとヘモグロビン含有量、毛細血管密度を増やし、筋肉への酸素供給を増やします。こうした身体の適応反応により、パフォーマンスを向上させることができるとされています。

しかし、このプロセスには数週間、あるいは数ヶ月もの高地での生活とトレーニングが必要になります。地元のジムでマスクをして40分マシンを使う程度では全く不十分なのです。

さらには、高度に慣れるまではパフォーマンスは下がります。心肺機能の指標となるVO2max(最大酸素摂取量)は、高度1100メートル以上では100メートル上昇する毎に、およそ10パーセントずつ下がっていきます。加えて、トレーニングの強度と量が減ると、トレーニングの質が落ちるため、全般的なパフォーマンスも低下します。

高地で十分な期間トレーニングを行えば、身体が低い酸素分圧に適応することができます。そうなって初めて、持久系のアスリートに望ましい変化が期待できるのです。ヘモグロビン濃度の増強、毛細血管密度の増加、ミトコンドリアの増加、緩衝能力の向上などの変化です。

高地トレーニングの問題点は、生理的な適応状態が通常3~4週間で消滅してしまうことです。さらに問題なのは、低酸素環境でのトレーニングとパフォーマンスの適応についての様々な研究の結果を見ると、せいぜいどちらとも言えないという程度で、実際、ほとんどの研究では低酸素トレーニングに効果はないという結果に至っているのです。

 

トレーニングマスクは効果が期待できない

マスクの話に戻ると、空気中の酸素分圧が低くなる高地の環境は、マスクを使って酸素供給を制限することとは異なります。実際、このトレーニングマスクでヘモグロビン量を増やすことができるなど、ほんの少しでも生理学の知識があるなら夢にも思わないでしょう。

トレーニングマスクは呼吸する空気中の酸素分圧には変化を与えません。マスクは肺に届く空気の総量を減らしているだけです。ストローを使って呼吸しながら走る状態、先ほど言いましたが枕を顔に貼り付けて走る状態を考えてみてください。これは基本的には空気制限トレーニング、または「吸気筋トレーニング」です。

吸気筋トレーニングは慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者によく使われる効果的なトレーニングです。このトレーニングによって、吸気筋のパワーと持久力を強化し、運動能力も向上させることができます。しかし、アスリートでも同様でしょうか?大した結果は望めません。

持久力は、呼吸で得る空気の量で決まるものではありません。空気中の酸素量、そしてその使い方によって決まるのです。高地のように酸素分圧を変えることなく低酸素環境を作り出してトレーニングしても、呼吸系の強さを鍛えているだけということになります。

複数の研究が、吸気筋トレーニングはアスリートの呼吸機能を向上させるとの結果を示しています。しかし、吸気筋トレーニングや低酸素トレーニングは、どのような強度の競技であっても、実際の競技におけるパフォーマンスの向上に、全くとは言わないまでも、ほとんど効果がありません。

低酸素トレーニングは間違いなくよりハードな実感があるでしょう。心拍数は上昇し、呼吸も荒くなり、最大強度のトレーニングでは乳酸反応も通常より高くなるでしょう。これはすべて想定内のことです。

酸素供給を制限することで、どのような強度の運動であれ、身体には通常以上の負荷をかけることになります。しかし、マスクなしで行える限りの運動強度と運動量を目指す方がずっと質が高く、マスクをして行うどのようなトレーニングよりも身体の適応能力を高めることができると言えます。

 

横隔膜の強度を高め、マスクをしている時のようにより強く呼吸できるようになること自体は、有酸素容量にも、持久力にも関係ありません。持久系の種目のすぐれたアスリートを考えてみてください。彼らは代謝効率が非常に良く、そしてこれが重要なことなのです。強い横隔膜とより深い呼吸はこの効率性を低下させ、そしてパフォーマンスを落としてしまいます。

トレーニングの状況や目標はどうであれ、皆さんは健康レベルを向上させようとしていることと思います。最大酸素摂取量、乳酸閾値、水素イオン緩衝能を高めるようにしてください。強靭性、パワー、スピードを向上させるためのレジスタンストレーニングは持久力を向上させます。これらは身体に望ましい適応反応を起こしますが、トレーニングマスクでその効果が増強されることはありません。

 

筋トレにトレーニングマスクを応用した場合は?

ではウェイトリフティングの場合、トレーニングマスクは何かの役に立つでしょうか?ジムでは良く見かける光景ですが、あまり賢明なことではありません。回数の多いスクワットを例に考えてみます。15~20回のスクワットをこなすのには20秒程度かかります。こうした短く、高強度の運動では酸素使用はパフォーマンスに大きな影響を及ぼしません。しかし、マスクをした状態ではリフトを行う際の呼吸が制約されるためパフォーマンスに悪影響が出るはずです。

コンセントリック(短縮性筋収縮)でもエキセントリック(伸張性筋収縮)でも、リフト中の動きと連動した深く、質の良い呼吸の代わりに短く浅い息遣いになれば、ウェイトをコントロールし、安定させることができません。腹腔内の圧力を効果的に高め、体幹を安定させるために必要な充分な空気を吸い込めなければ、バルサルバ効果を適切に活用できません。

 

トレーニングマスクをして、レジスタンストレーニングを行うことで何か望ましい適応がもたらされるという科学的な証拠は全くありません。考えてみてください。疑うまでもなく、マスクをして軽いウェイトでセット数も少ないトレーニングより呼吸が自由にできる方が、トレーニング強度の面でも、トレーニング量の面でも有利なことがお分かりいただけるでしょう。

 

トレーニングマスク:最後に~

赤血球の増加のような高度トレーニングの効果を本当に望むのであれば、高地に比較的長いこと定住する必要があることが研究で明らかになっています。しかし、トレーニングの効果を最大化したければ、トレーニングは低地で行う必要があるかもしれません。

高地では空気が薄いため、身体は酸素運搬能力を高め、より多くの赤血球を作ることで対応しようとします。これは運動をしていない時にも当てはまります。こうした体の適応反応は有酸素運動のパワー源として役立ちますが、高地でのトレーニングはパフォーマンスと回数が落ちます。低地でトレーニングを行う場合はこうした問題はありません。なので、「高地に住んで、低地でトレーニング」が理想的な組み合わせになります。

しかし、海抜0メートルに住んで低圧室で数時間だけ過ごすだけでは赤血球の数を増やすには不十分です。だから熱心な持久系のアスリートは、実際にこうした低圧室で寝たりするわけです。次のオリンピックのマラソンで金メダルを取ろうと思っているのなら、1日のうち20~22時間、1週間のうち5日、効果を見るには最低でも4週間は標高の高い場所に居なければなりません。勝つこととはそう簡単ではないのです。

 

最後に。トレーニング中にマスクをすることについて、その心理的な効果を支持する意見もあります。こうした意見は、相手によって呼吸を制約された場合のシミュレーションができるとして、総合格闘技ファイターに特に支持されているようです。これは全くその通りです。心理的な面から何か役に立つのなら、マスクをしたらよいでしょう。

しかし、こうしたマスクの生理学的な有用性については、研究や事例による証拠は何もありません。どのような意味においても、マスクでは高地トレーニングでの生理的作用を再現することもできません。お金とトレーニングの労力は何か他のことに使うべきでしょう。


トレーニングマスクと高地トレーニングの効果はあるのか?まとめ~

フェアマン氏の見解を要約すると、

・トレーニングマスクを着用するのは肺に届く空気の総量を阻害してしまっているだけで、高地の環境を再現することとは根本的に異なるものだし、マスクなしで行える限りの運動強度と運動量を目指す方がずっと質が高いということ。

・そして高地でのトレーニングは、酸素分圧の低い状態にさらされることへの体の適応反応により、ヘモグロビン濃度の増強、毛細血管密度の増加、ミトコンドリアの増加、緩衝能力の向上などによる持久力の向上が望めるが、この適応効果が出てくるには高地トレーニングを始めてから数週間、数か月と長いプロセスが必要になること。

・そして長いプロセスでせっかく得た、その適応状態(効果)も通常3~4週間で消滅してしまうことと、何より大きいのは、そもそも高地でのトレーニングが身体的パフォーマンスを向上させているかを調べた様々な研究結果で、その成果が出ていない、高地トレーニングの様な低酸素トレーニングに効果はない、と結論付けられてしまっているということです。

『高地トレーニング、トレーニングマスクに効果はない』、そう断言してしまうのは少し勇気が要りますが、実際に様々な研究ではっきりとした成果が得られていないというのは考えさせられてしまいますよね。

もちろん反対の意見もあると思いますが、これらのトレーニングの導入を考えている方は、再考した方が良いと言えるのかもしれません。

それではフィットネスジャンキーでした!

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